を使って説明をしております。しかし二者を截然《せつぜん》区別のあるごとく論じているのが欠点かと思われます。)すでに公平無視の立場でありますから、問題の撰択《せんたく》がない。撰択がないと云うのは、意識界に落つるものがことごとく焦点になってしまうと云う訳ではありません。意識界のどの部分も比較的自由に焦点になり得ると云う意味であります。毛嫌《けぎらい》をしないと云う事であります。あるものだけに注意が向いて、その他には頑強《がんきょう》の抵抗があって、気が向けられないというような状態におらない事を指すのであります。だからもう一つ言葉を換えて云うと叙述すべき事相に自己の評価を与えて優劣の差別をつけないと云う事にもなります。例《たと》えば美くしい女と差し向いになる。――ありがたい。――女が恋の物語をする。――嬉《うれ》しい。――ところで急に女が欠伸《あくび》をする。――と急に厭《いや》になる。厭になったからと云って、そこだけ抜きにしてしまったら、抜かしただけが事実に叶《かな》わなくなる。しかし事実を書くからには、真を写すと云うからには、いたずらに好悪の念だけで欠伸を棄てべきものではないはずであり
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