マ化に乏しい。筆力の点から云えばとうていこれらの大家に及ぶ訳はないが、今わが画《え》にして見ようと思う心持ちはもう少し複雑である。複雑であるだけにどうも一枚のなかへは感じが収まりかねる。頬杖《ほおづえ》をやめて、両腕を机の上に組んで考えたがやはり出て来ない。色、形、調子が出来て、自分の心が、ああここにいたなと、たちまち自己を認識するようにかかなければならない。生き別れをした吾子《わがこ》を尋ね当てるため、六十余州を回国《かいこく》して、寝《ね》ても寤《さ》めても、忘れる間《ま》がなかったある日、十字街頭にふと邂逅《かいこう》して、稲妻《いなずま》の遮《さえ》ぎるひまもなきうちに、あっ、ここにいた、と思うようにかかなければならない。それがむずかしい。この調子さえ出れば、人が見て何と云っても構わない。画でないと罵《ののし》られても恨《うらみ》はない。いやしくも色の配合がこの心持ちの一部を代表して、線の曲直《きょくちょく》がこの気合の幾分を表現して、全体の配置がこの風韻《ふういん》のどれほどかを伝えるならば、形にあらわれたものは、牛であれ馬であれ、ないしは牛でも馬でも、何でもないものであれ、
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