ツ》あ、やに身体《からだ》がなまけやがって――まあ一ぷく御上《おあ》がんなさい。一人で志保田にいちゃ、退屈でしょう。ちと話しに御出《おいで》なせえ。どうも江戸っ子は江戸っ子同志でなくっちゃ、話しが合わねえものだから。何ですかい、やっぱりあの御嬢さんが、御愛想に出てきますかい。どうもさっぱし、見境《みさけえ》のねえ女だから困っちまわあ」
「御嬢さんが、どうとか、したところで頭垢が飛んで、首が抜けそうになったっけ」
「違《ちげえ》ねえ、がんがらがんだから、からっきし、話に締りがねえったらねえ。――そこでその坊主が逆《のぼ》せちまって……」
「その坊主たあ、どの坊主だい」
「観海寺《かんかいじ》の納所坊主《なっしょぼうず》がさ……」
「納所《なっしょ》にも住持《じゅうじ》にも、坊主はまだ一人も出て来ないんだ」
「そうか、急勝《せっかち》だから、いけねえ。苦味走《にがんばし》った、色の出来そうな坊主だったが、そいつが御前《おまえ》さん、レコに参っちまって、とうとう文《ふみ》をつけたんだ。――おや待てよ。口説《くどい》たんだっけかな。いんにゃ文だ。文に違《ちげ》えねえ。すると――こうっと――何だ
前へ
次へ
全217ページ中81ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング