オくも何とも思いません」
「思わんでもいいでしょう」
「そうですかね。あなたは今の男をいったい何だと御思いです」
「そうさな。どうもあまり、金持ちじゃありませんね」
「ホホホ善《よ》くあたりました。あなたは占《うらな》いの名人ですよ。あの男は、貧乏して、日本にいられないからって、私に御金を貰いに来たのです」
「へえ、どこから来たのです」
「城下《じょうか》から来ました」
「随分遠方から来たもんですね。それで、どこへ行くんですか」
「何でも満洲へ行くそうです」
「何しに行くんですか」
「何しに行くんですか。御金を拾いに行くんだか、死にに行くんだか、分りません」
 この時余は眼をあげて、ちょと女の顔を見た。今結んだ口元には、微《かす》かなる笑の影が消えかかりつつある。意味は解《げ》せぬ。
「あれは、わたくしの亭主です」
 迅雷《じんらい》を掩《おお》うに遑《いとま》あらず、女は突然として一太刀《ひとたち》浴びせかけた。余は全く不意撃《ふいうち》を喰《く》った。無論そんな事を聞く気はなし、女も、よもや、ここまで曝《さら》け出そうとは考えていなかった。
「どうです、驚ろいたでしょう」と女が云う
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