フ脛《はぎ》が出る。脛が出切《でき》ったら、藁草履《わらぞうり》になって、その藁草履がだんだん動いて来る。頭の上に山桜が落ちかかる。背中には光る海を負《しょっ》ている。
岨道《そばみち》を登り切ると、山の出鼻《でばな》の平《たいら》な所へ出た。北側は翠《みど》りを畳《たた》む春の峰で、今朝|椽《えん》から仰いだあたりかも知れない。南側には焼野とも云うべき地勢が幅半丁ほど広がって、末は崩《くず》れた崖《がけ》となる。崖の下は今過ぎた蜜柑山で、村を跨《また》いで向《むこう》を見れば、眼に入るものは言わずも知れた青海《あおうみ》である。
路《みち》は幾筋もあるが、合うては別れ、別れては合うから、どれが本筋とも認められぬ。どれも路である代りに、どれも路でない。草のなかに、黒赤い地が、見えたり隠れたりして、どの筋につながるか見分《みわけ》のつかぬところに変化があって面白い。
どこへ腰を据《す》えたものかと、草のなかを遠近《おちこち》と徘徊《はいかい》する。椽《えん》から見たときは画《え》になると思った景色も、いざとなると存外|纏《まと》まらない。色もしだいに変ってくる。草原をのそつくうちに
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