ユ雅にもなる、すべての困苦に打ち勝って、胸中の一点の無上趣味を満足せしめたくなる。肉体の苦しみを度外に置いて、物質上の不便を物とも思わず、勇猛|精進《しょうじん》の心を駆《か》って、人道のために、鼎※[#「金+護のつくり」、第3水準1−93−41]《ていかく》に烹《に》らるるを面白く思う。もし人情なる狭《せま》き立脚地に立って、芸術の定義を下し得るとすれば、芸術は、われら教育ある士人の胸裏《きょうり》に潜《ひそ》んで、邪《じゃ》を避《さ》け正《せい》に就《つ》き、曲《きょく》を斥《しりぞ》け直《ちょく》にくみし、弱《じゃく》を扶《たす》け強《きょう》を挫《くじ》かねば、どうしても堪《た》えられぬと云う一念の結晶して、燦《さん》として白日《はくじつ》を射返すものである。
芝居気があると人の行為を笑う事がある。うつくしき趣味を貫《つらぬ》かんがために、不必要なる犠牲をあえてするの人情に遠きを嗤《わら》うのである。自然にうつくしき性格を発揮するの機会を待たずして、無理矢理に自己の趣味観を衒《てら》うの愚《ぐ》を笑うのである。真に個中《こちゅう》の消息を解し得たるものの嗤うはその意を得ている
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