a茶を飲み干して、糸底《いとぞこ》を上に、茶托《ちゃたく》へ伏せて、立ち上る。
「門まで送ってあげよう。りょううねええん。御客が御帰《おかえり》だぞよ」
送られて、庫裏《くり》を出ると、鳩がくううくううと鳴く。
「鳩ほど可愛いものはない、わしが、手をたたくと、みな飛んでくる。呼んで見よか」
月はいよいよ明るい。しんしんとして、木蓮《もくれん》は幾朶《いくだ》の雲華《うんげ》を空裏《くうり》に※[#「警」の「言」に代えて「手」、第3水準1−84−92]《ささ》げている。※[#「さんずい+穴」、第4水準2−78−39]寥《けつりょう》たる春夜《しゅんや》の真中《まなか》に、和尚ははたと掌《たなごころ》を拍《う》つ。声は風中《ふうちゅう》に死して一羽の鳩も下りぬ。
「下りんかいな。下りそうなものじゃが」
了念は余の顔を見て、ちょっと笑った。和尚は鳩の眼が夜でも見えると思うているらしい。気楽なものだ。
山門の所で、余は二人に別れる。見返えると、大きな丸い影と、小さな丸い影が、石甃《いしだたみ》の上に落ちて、前後して庫裏の方に消えて行く。
十二
基督《キリスト》は最
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