ヘこれで、かくがの。そら、ここに掛けてある、この軸《じく》は先代がかかれたのじゃが、なかなかようかいとる」
 なるほど達磨の画が小さい床《とこ》に掛っている。しかし画としてはすこぶるまずいものだ。ただ俗気《ぞっき》がない。拙《せつ》を蔽《おお》おうと力《つと》めているところが一つもない。無邪気な画だ。この先代もやはりこの画のような構わない人であったんだろう。
「無邪気な画ですね」
「わしらのかく画はそれで沢山じゃ。気象《きしょう》さえあらわれておれば……」
「上手で俗気があるのより、いいです」
「ははははまあ、そうでも、賞《ほ》めて置いてもらおう。時に近頃は画工にも博士があるかの」
「画工の博士はありませんよ」
「あ、そうか。この間、何でも博士に一人|逢《お》うた」
「へええ」
「博士と云うとえらいものじゃろな」
「ええ。えらいんでしょう」
「画工にも博士がありそうなものじゃがな。なぜ無いだろう」
「そういえば、和尚さんの方にも博士がなけりゃならないでしょう」
「ハハハハまあ、そんなものかな。――何とか云う人じゃったて、この間逢うた人は――どこぞに名刺があるはずだが……」
「どこで御逢
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