チて落ちているうちに、池の水が赤くなるだろうと考えた。花が静かに浮いている辺《あたり》は今でも少々赤いような気がする。また落ちた。地の上へ落ちたのか、水の上へ落ちたのか、区別がつかぬくらい静かに浮く。また落ちる。あれが沈む事があるだろうかと思う。年々《ねんねん》落ち尽す幾万輪の椿は、水につかって、色が溶《と》け出して、腐って泥になって、ようやく底に沈むのかしらん。幾千年の後にはこの古池が、人の知らぬ間《ま》に、落ちた椿のために、埋《うず》もれて、元の平地《ひらち》に戻るかも知れぬ。また一つ大きいのが血を塗った、人魂《ひとだま》のように落ちる。また落ちる。ぽたりぽたりと落ちる。際限なく落ちる。
 こんな所へ美しい女の浮いているところをかいたら、どうだろうと思いながら、元の所へ帰って、また煙草を呑《の》んで、ぼんやり考え込む。温泉場《ゆば》の御那美《おなみ》さんが昨日《きのう》冗談《じょうだん》に云った言葉が、うねりを打って、記憶のうちに寄せてくる。心は大浪《おおなみ》にのる一枚の板子《いたご》のように揺れる。あの顔を種《たね》にして、あの椿の下に浮かせて、上から椿を幾輪も落とす。椿が長《
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