フ》えて、朝な夕なに、弄《なぶ》らるる期を、待ち暮らし、待ち明かし、幾代《いくよ》の思《おもい》を茎《くき》の先に籠《こ》めながら、今に至るまでついに動き得ずに、また死に切れずに、生きているらしい。
 余は立ち上がって、草の中から、手頃の石を二つ拾って来る。功徳《くどく》になると思ったから、眼の先へ、一つ抛《ほう》り込んでやる。ぶくぶくと泡《あわ》が二つ浮いて、すぐ消えた。すぐ消えた、すぐ消えたと、余は心のうちで繰り返す。すかして見ると、三茎《みくき》ほどの長い髪が、慵《ものうげ》に揺れかかっている。見つかってはと云わぬばかりに、濁った水が底の方から隠しに来る。南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》。
 今度は思い切って、懸命に真中《まんなか》へなげる。ぽかんと幽《かす》かに音がした。静かなるものは決して取り合わない。もう抛《な》げる気も無くなった。絵の具箱と帽子を置いたまま右手へ廻る。
 二間余りを爪先上《つまさきあ》がりに登る。頭の上には大きな樹《き》がかぶさって、身体《からだ》が急に寒くなる。向う岸の暗い所に椿《つばき》が咲いている。椿の葉は緑が深すぎて、昼見ても、日向《ひなた》で見ても
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