ュ二の矢をついだ。だんだん旗色《はたいろ》がわるくなるが、どこで盛り返したものか、いったん機先を制せられると、なかなか隙《すき》を見出しにくい。
「じゃ昨夕《ゆうべ》の風呂場も、全く御親切からなんですね」と際《きわ》どいところでようやく立て直す。
女は黙っている。
「どうも済みません。御礼に何を上げましょう」と出来るだけ先へ出て置く。いくら出ても何の利目《ききめ》もなかった。女は何喰わぬ顔で大徹和尚《だいてつおしょう》の額を眺《なが》めている。やがて、
「竹影《ちくえい》払階《かいをはらって》塵不動《ちりうごかず》」
と口のうちで静かに読み了《おわ》って、また余の方へ向き直ったが、急に思い出したように、
「何ですって」
と、わざと大きな声で聞いた。その手は喰わない。
「その坊主にさっき逢《あ》いましたよ」と地震に揺《ゆ》れた池の水のように円満な動き方をして見せる。
「観海寺《かんかいじ》の和尚ですか。肥《ふと》ってるでしょう」
「西洋画で唐紙《からかみ》をかいてくれって、云いましたよ。禅坊さんなんてものは随分|訳《わけ》のわからない事を云いますね」
「それだから、あんなに肥れるんでし
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