ソりんざし》に活《い》けた、椿《つばき》がふらふらと揺れる。「地震!」と小声で叫んだ女は、膝《ひざ》を崩《くず》して余の机に靠《よ》りかかる。御互《おたがい》の身躯《からだ》がすれすれに動く。キキーと鋭《する》どい羽摶《はばたき》をして一羽の雉子《きじ》が藪《やぶ》の中から飛び出す。
「雉子が」と余は窓の外を見て云う。
「どこに」と女は崩した、からだを擦寄《すりよ》せる。余の顔と女の顔が触れぬばかりに近づく。細い鼻の穴から出る女の呼吸《いき》が余の髭《ひげ》にさわった。
「非人情ですよ」と女はたちまち坐住居《いずまい》を正しながら屹《きっ》と云う。
「無論」と言下《ごんか》に余は答えた。
岩の凹《くぼ》みに湛《たた》えた春の水が、驚ろいて、のたりのたりと鈍《ぬる》く揺《うご》いている。地盤の響きに、満泓《まんおう》の波が底から動くのだから、表面が不規則に曲線を描くのみで、砕《くだ》けた部分はどこにもない。円満に動くと云う語があるとすれば、こんな場合に用いられるのだろう。落ちついて影を※[#「くさかんむり/(酉+隹)/れんが」、第3水準1−91−44]《ひた》していた山桜が、水と共に、
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