人生
夏目漱石
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)空《くう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)千百万人|亦《また》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「迚−中」、第4水準2−89−74]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)各《おの/\》
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
空《くう》を劃《くわく》して居る之《これ》を物といひ、時に沿うて起る之を事といふ、事物を離れて心なく、心を離れて事物なし、故に事物の変遷推移を名づけて人生といふ、猶《なほ》麕身《きんしん》牛尾《ぎうび》馬蹄《ばてい》のものを捉へて麟《きりん》といふが如し、かく定義を下せば、頗《すこぶ》る六つかしけれど、是を平仮名《ひらがな》にて翻訳すれば、先づ地震、雷、火事、爺《おやぢ》の怖きを悟り、砂糖と塩の区別を知り、恋の重荷義理の柵《しがらみ》抔《など》いふ意味を合点《がてん》し、順逆の二境を踏み、禍福の二門をくゞる
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