の謂《いひ》に過ぎず、但《たゞ》其謂に過ぎずと観ずれば、遭逢《さうほう》百端《ひやくたん》千差万別、十人に十人の生活あり、百人に百人の生活あり、千百万人|亦《また》各《おの/\》千百万人の生涯を有す、故に無事なるものは午砲を聞きて昼飯を食ひ、忙しきものは孔席《こうせき》暖《あたゝ》かならず、墨突《ぼくとつ》黔《けん》せずとも云ひ、変化の多きは塞翁《さいをう》の馬に※[#「迚−中」、第4水準2−89−74]《しんにう》をかけたるが如く、不平なるは放たれて沢畔《たくはん》に吟じ、壮烈なるは匕首《ひしゅ》を懐《ふところ》にして不測の秦《しん》に入り、頑固なるは首陽山の薇《わらび》に余命を繋《つな》ぎ、世を茶にしたるは竹林に髯《ひげ》を拈《ひね》り、図太《づぶと》きは南禅寺の山門に昼寝して王法を懼《おそ》れず、一々数へ来れば日も亦足らず、中々錯雑なものなり、加之《のみならず》個人の一行一為、各其|由《よ》る所を異にし、其及ぼす所を同じうせず、人を殺すは一なれども、毒を盛るは刃《やいば》を加ふると等しからず、故意なるは不慮の出来事と云ふを得ず、時には間接ともなり、或は又直接ともなる、之を分類する
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