ものにあらずして、小説は一個の理窟を暗示するに過ぎざる以上は、「サイン」「コサイン」を使用して三角形の高さを測ると一般なり、吾人の心中には底なき三角形あり、二辺並行せる三角形あるを奈何《いかん》せん、若《も》し人生が数学的に説明し得るならば、若し与へられたる材料よりXなる人生が発見せらるゝならば、若し人間が人間の主宰たるを得るならば、若し詩人文人小説家が記載せる人生の外に人生なくんば、人生は余程便利にして、人間は余程えらきものなり、不測の変外界に起り、思ひがけぬ心は心の底より出で来る、容赦なく且《かつ》乱暴に出で来る、海嘯と震災は、啻《たゞ》に三陸と濃尾に起るのみにあらず、亦自家三寸の丹田《たんでん》中にあり、険呑《けんのん》なる哉《かな》
[#地から2字上げ](明治二十九年十月、第五高等学校『竜南会雑誌』)
底本:「現代日本文學大系17 夏目漱石集(一)」筑摩書房
1968(昭和43)年10月25日
入力:柿澤早苗
校正:伊藤時也
2000年2月4日公開
2004年2月27日修正
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