ざるは是が為なりと、人|豈《あに》自ら知らざらんや、「ポー」の言を反覆熟読せば、思|半《なか》ばに過ぎん、蓋《けだ》し人は夢を見るものなり、思ひも寄らぬ夢を見るものなり、覚めて後冷汗背に洽《あまね》く、茫然自失する事あるものなり、夢ならばと一笑に附し去るものは、一を知つて二を知らぬものなり、夢は必ずしも夜中臥床の上にのみ見舞に来るものにあらず、青天にも白日にも来り、大道の真中にても来り、衣冠束帯の折だに容赦なく闥《たつ》を排して闖入《ちんにふ》し来る、機微の際|忽然《こつぜん》として吾人を愧死《きし》せしめて、其来る所|固《もと》より知り得べからず、其去る所亦尋ね難し、而も人生の真相は半ば此夢中にあつて隠約たるものなり、此自己の真相を発揮するは即ち名誉を得るの捷径《せふけい》にして、此捷径に従ふは卑怯《ひけふ》なる人類にとりて無上の難関なり、願はくば人|豈《あに》自ら知らざらんや抔《など》いふものをして、誠実に其心の歴史を書かしめん、彼必ず自ら知らざるに驚かん
三陸の海嘯《つなみ》濃尾《のうび》の地震之を称して天災といふ、天災とは人意の如何《いかん》ともすべからざるもの、人間の行為は
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