正岡子規
夏目漱石

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)遣《や》って来た。

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)又|鮭《さけ》で

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)当り前にするときん[#「きん」に傍点]隠しが
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 正岡の食意地の張った話か。ハヽヽヽ。そうだなあ。なんでも僕が松山に居た時分、子規は支那から帰って来て僕のところへ遣《や》って来た。自分のうちへ行くのかと思ったら、自分のうちへも行かず親族のうちへも行かず、此処《ここ》に居るのだという。僕が承知もしないうちに、当人一人で極《き》めて居る。御承知の通り僕は上野の裏座敷を借りて居たので、二階と下、合せて四間あった。上野の人が頻《しき》りに止める。正岡さんは肺病だそうだから伝染するといけないおよしなさいと頻りにいう。僕も多少気味が悪かった。けれども断わらんでもいいと、かまわずに置く。僕は二階に居る、大将は下に居る。其うち松山中の俳句を遣《や》る門下生が集まって来る。僕が学校から帰って見ると、毎日のように多勢来て居る。僕は本を読む事もどうすることも出
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