からとりかかったが、装置がなかなかめんどうなのでまだ思うような結果が出てきません。夏は比較的こらえやすいが、寒夜になると、たいへんしのぎにくい。外套《がいとう》を着て襟巻をしても冷たくてやりきれない。……」
 三四郎は大いに驚いた。驚くとともに光線にどんな圧力があって、その圧力がどんな役に立つんだか、まったく要領を得るに苦しんだ。
 その時野々宮君は三四郎に、「のぞいてごらんなさい」と勧めた。三四郎はおもしろ半分、石の台の二、三間手前にある望遠鏡のそばへ行って右の目をあてがったが、なんにも見えない。野々宮君は「どうです、見えますか」と聞く。「いっこう見えません」と答えると、「うんまだ蓋《ふた》が取らずにあった」と言いながら、椅子を立って望遠鏡の先にかぶせてあるものを除《の》けてくれた。
 見ると、ただ輪郭のぼんやりした明るいなかに、物差しの度盛りがある。下に2の字が出た。野々宮君がまた「どうです」と聞いた。「2の字が見えます」と言うと、「いまに動きます」と言いながら向こうへ回って何かしているようであった。
 やがて度盛りが明るいなかで動きだした。2が消えた。あとから3が出る。そのあとか
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