ュひいている。砂を練り固めたような大きな甕《かめ》がある。その中から矢が二本出ている。鼠色《ねずみいろ》の羽根と羽根の間が金箔《きんぱく》で強く光る。そのそばに鎧《よろい》もあった。三四郎は卯《う》の花縅《はなおど》しというのだろうと思った。向こう側のすみにぱっと目を射るものがある。紫の裾模様の小袖《こそで》に金糸《きんし》の刺繍《ぬい》が見える。袖から袖へ幔幕《まんまく》の綱《つな》を通して、虫干の時のように釣るした。袖は丸くて短かい。これが元禄《げんろく》かと三四郎も気がついた。そのほかには絵がたくさんある。壁にかけたのばかりでも大小合わせるとよほどになる。額縁《がくぶち》をつけない下絵というようなものは、重ねて巻いた端《はし》が、巻きくずれて、小口《こぐち》をしだらなくあらわした。
描かれつつある人の肖像は、この彩色《いろどり》の目を乱す間にある。描かれつつある人は、突き当りの正面に団扇《うちわ》をかざして立った。描く男は丸い背をぐるりと返して、パレットを持ったまま、三四郎に向かった。口に太いパイプをくわえている。
「やって来たね」と言ってパイプを口から取って、小さい丸テーブル
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