フ腰をおろすやいなやである。三四郎はすぐ口を開いた。ほとんど発作《ほっさ》に近い。
「佐々木が」
「佐々木さんが、あなたの所へいらしったでしょう」と言って例の白い歯を現わした。女のうしろにはさきの蝋燭立がマントルピースの左右に並んでいる。金で細工《さいく》をした妙な形の台である。これを蝋燭立と見たのは三四郎の臆断《おくだん》で、じつはなんだかわからない。この不可思議の蝋燭立のうしろに明らかな鏡がある。光線は厚い窓掛けにさえぎられて、十分にはいらない。そのうえ天気は曇っている。三四郎はこのあいだに美禰子の白い歯を見た。
「佐々木が来ました」
「なんと言っていらっしゃいました」
「ぼくにあなたの所へ行けと言って来ました」
「そうでしょう。――それでいらしったの」とわざわざ聞いた。
「ええ」と言って少し躊躇《ちゅうちょ》した。あとから「まあ、そうです」と答えた。女はまったく歯を隠した。静かに席を立って、窓の所へ行って、外面《そと》をながめだした。
「曇りましたね。寒いでしょう、戸外《そと》は」
「いいえ、存外暖かい。風はまるでありません」
「そう」と言いながら席へ帰って来た。
「じつは佐々木
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