をこしらえて、美禰子の家へ行った。前を通ったことはなんべんでもある。けれどもはいるのははじめてである。瓦葺《かわらぶき》の門の柱に里見恭助という標札が出ている。三四郎はここを通るたびに、里見恭助という人はどんな男だろうと思う。まだ会ったことがない。門は締まっている。潜《くぐ》りからはいると玄関までの距離は存外短かい。長方形の御影石《みかげいし》が飛び飛びに敷いてある。玄関は細いきれいな格子《こうし》でたてきってある。ベルを押す。取次ぎの下女に、「美禰子さんはお宅ですか」と言った時、三四郎は自分ながら気恥ずかしいような妙な心持ちがした。ひとの玄関で、妙齢の女の在否を尋ねたことはまだない。はなはだ尋ねにくい気がする。下女のほうは案外まじめである。しかもうやうやしい。いったん奥へはいって、また出て来て、丁寧にお辞儀をして、どうぞと言うからついて上がると応接間へ通した。重い窓掛けの掛かっている西洋室である。少し暗い。
 下女はまた、「しばらく、どうか……」と挨拶して出て行った。三四郎は静かな部屋《へや》の中に席を占めた。正面に壁を切り抜いた小さい暖炉《だんろ》がある。その上が横に長い鏡になっ
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