キ気《うんき》でむれてまっ赤になっている。万事そういうふうでまことに困る」
実をいうと三四郎はこのあいだ与次郎に二十円貸した。二週間後には文芸時評社から原稿料が取れるはずだから、それまで立替《たてか》えてくれろと言う。事理《わけ》を聞いてみると、気の毒であったから、国から送ってきたばかりの為替《かわせ》を五円引いて、余りはことごとく貸してしまった。まだ返す期限ではないが、広田の話を聞いてみると少々心配になる。しかし先生にそんな事は打ち明けられないから、反対に、
「でも佐々木君は、大いに先生に敬服して、陰では先生のためになかなか尽力しています」と言うと、先生はまじめになって、
「どんな尽力をしているんですか」と聞きだした。ところが「偉大なる暗闇《くらやみ》」その他すべて広田先生に関する与次郎の所為《しょい》は、先生に話してはならないと、当人から封じられている。やりかけた途中でそんな事が知れると先生にしかられるにきまってるから黙っているべきだという。話していい時にはおれが話すと明言しているんだからしかたがない。三四郎は話をそらしてしまった。
三四郎が広田の家へ来るにはいろいろな意味があ
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