だや》かであったのみならず、役が御留守居だから、だいぶ金を使って風流《ふうりゅう》をやったそうだ」
「その人の事について何か艶聞《えんぶん》が――艶聞と云うと妙ですが――ないでしょうか」
「いや才三については憐れな話がある。その頃家中に小野田帯刀《おのだたてわき》と云うて、二百石取りの侍《さむらい》がいて、ちょうど河上と向い合って屋敷を持っておった。この帯刀に一人の娘があって、それがまた藩中第一の美人であったがな、あなた」
「なるほど」うまいだんだん手懸《てがか》りが出来る。
「それで両家は向う同志だから、朝夕《あさゆう》往来をする。往来をするうちにその娘が才三に懸想《けそう》をする。何でも才三方へ嫁に行かねば死んでしまうと騒いだのだて――いや女と云うものは始末に行かぬもので――是非行かして下されと泣くじゃ」
「ふん、それで思う通りに行きましたか」成蹟《せいせき》は良好だ。
「で帯刀から人をもって才三の親に懸合《かけあ》うと、才三も実は大変貰いたかったのだからその旨《むね》を返事する。結婚の日取りまできめるくらいに事が捗《はか》どったて」
「結構な事で」と申したがこれで結婚をしてくれて
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