それでさしつかえないようにみえるけれども、姉娘の父母はこの二、三年のあいだに、苦々しい思いをたえず陰でなめさせられたのである。そのすべては娘のかたづいた先の夫の不身持ちから起こったのだといえばそれまでであるが、父母だって、娘の亭主を、業務上必要のつきあいから追い出してまで、娘の権利と幸福を庇護《ひご》しようと試みるほどさばけない人たちではなかった。

    三

 実をいうと、父母ははじめからそれを承知のうえで娘を嫁にやったのである。それのみか、腕ききの腕を最も敏活に働かすという意味に解釈した酒と女は、仕事のうえに欠くべからざる交際社会の必要条件とまで認めていた。それだのに彼らはやがて眉《まゆ》をひそめなければならなくなってきた。かねてじょうぶであった娘の健康が、嫁にいってしばらくすると、目につくように衰えだした時に、彼らはもう相応に胸を傷めた。娘に会うたびに母親はどこか悪くはないかと聞いた。娘はただ微笑して、べつだんなんともないとばかり答えていた。けれどもその血色はしだいにあおくなるだけであった。そうしてしまいにはとうとう病気だということがわかった。しかもその病気があまりたちのよい
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