紙のことは妻《さい》には話さなかった。旅行後一か月めに重吉から十円届いた時、妻はでも感心ねと言った。二か月めに十円届いた時には、まったく感心だわと言った。三か月めには七円しかこなかった。すると妻は重吉さんも苦しいんでしょうと言った。自分から見ると、重吉のお静さんに対する敬意は、この過去三か月間において、すでに三円がた欠乏しているといわなければならない。将来の敬意に至ってはむろん疑問である。
底本:「硝子戸の中」角川文庫、角川書店
1954(昭和29)年6月10日 初版発行
1994(平成6)年3月10日 改版21版発行
入力:柴田卓治
校正:しず
1999年9月9日公開
青空文庫作成ファイル:
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