学というのは、今の完備した中学などとは全然異っていて、その制度も正則と、変則との二つに分れていたのである。
 正則というのは日本語|許《ばか》りで、普通学の総《すべ》てを教授されたものであるが、その代り英語は更にやらなかった。変則の方はこれと異って、ただ英語のみを教えるというに止っていた。それで、私は何《ど》れに居たかと云えば、此の正則の方であったから、英語は些《すこ》しも習わなかったのである。英語を修《おさ》めていぬから、当時の予備門に入ることが六《むず》カ敷《し》い。これではつまらぬ、今まで自分の抱《いだ》いていた、志望が達せられぬことになるから、是非|廃《よ》そうという考を起したのであるが、却々《なかなか》親が承知して呉《く》れぬ。そこで、拠《よんどころ》なく毎日々々弁当を吊《つる》して家は出るが、学校には往かずに、その儘《まま》途中で道草を食って遊んで居た。その中《うち》に、親にも私が学校を退《ひ》きたいという考が解ったのだろう、間もなく正則の方は退くことになったというわけである。

     二

 既に中学が前いう如く、正則、変則の二科に分れて居り、正則の方を修めた者には更
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