つ》ままれた気味で坐っていた。
舞楽が一段落ついた時に、御茶を上げますと誰かが云ったので周囲の人は席を立って別室に動き始めた。そこへ先刻《さっき》三沢と約束の整ったという女の兄《あに》さんが来て、物馴《ものな》れた口調で彼と話した。彼はこういう方面に関係のある男と見えて、当日案内を受けた誰彼をよく知っていた。三沢と自分はこの人から今までそこいらにいた華族や高官や名士の名を教えて貰った。
別室には珈琲《コーヒー》とカステラとチョコレートとサンドイッチがあった。普通の会の時のように、無作法《ぶさほう》なふるまいは見受けられなかったけれども、それでも多少込み合うので、女は坐《すわ》ったなり席を立たないのがあった。三沢と彼の知人は、菓子と珈琲を盆の上に載せて、わざわざ二人の御嬢さんの所へ持って行った。自分はチョコレートの銀紙を剥《はが》しながら、敷居の上に立って、遠くからその様子を偸《ぬす》むように眺めていた。
三沢の細君になるべき人は御辞義《おじぎ》をして、珈琲|茶碗《ぢゃわん》だけを取ったが、菓子には手を触れなかった。いわゆる「もう一人の女」はその珈琲茶碗にさえ容易《たやす》く手を出
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