る自分達の眼には、夏休みといえば遠い未来であった。その遠い未来と現在の間には大きな不安が潜《ひそ》んでいた。
「しかしまあ仕方がない。元々こっちで勝手なプログラムを拵《こしら》えておいて、それに当てはまるように兄を自由に動かそうというんだから」
 自分はとうとう諦《あきら》めた。三沢は何にも批評せずに、机の角に肱《ひじ》を突き立てて、その上に顋《あご》を載せたなり自分の顔を眺めていた。彼はしばらくしてから、「だから僕のいう通りにすれば好いんだ」と云った。
 この間Hさんに兄の事を依頼しに行った帰《かえ》り途《みち》に、無言な彼は突然往来の真中で自分を驚かしたのである。今まで兄の事について一言《いちごん》も発しなかった彼は、その時不意に自分の肩を突いて、「君兄さんを旅行させるの、快活にするのって心配するより、自分で早く結婚した方が好かないか。その方がつまり君の得だぜ」と云った。
 彼が自分に結婚を勧めたのは、その晩が始めてではなかった。自分はいつも相手がないとばかり彼に答えていた。彼はしまいに相手を拵えてやると云い出した。そうして一時はそれがほとんど事実になりかけた事もあった。
 自分は
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