沢と二人肩を並べて帰った。
十六
自分は首を長くしてHさんの消息を待った。花のたよりが都下の新聞を賑《にぎわ》し始めた一週間の後《のち》になっても、Hさんからは何の通知もなかった。自分は失望した。電話を番町へかけて聞き合せるのも厭《いや》になった。どうでもするが好いという気分でじっとしていた。そこへ三沢が来た。
「どうも旨《うま》く行かないそうだ」
事実ははたして自分の想像した通りであった。兄はHさんの勧誘を断然断ってしまった。Hさんはやむをえず三沢を呼んで、その結果を自分に伝えるように頼んだ。
「それでわざわざ来てくれたのかい」
「まあそうだ」
「どうも御苦労さま、すまない」
自分はこれ以上何を云う気も起らなかった。
「Hさんはああ云う人だから、自分の責任のように気の毒がっている。今度は事があまり突然なので旨く行かなかったが、この次の夏休みには是非どこかへ連れ出すつもりだと云っていた」
自分はこういう慰藉《いしゃ》をもたらしてくれた三沢の顔を見て苦笑した。Hさんのような大悠《たいゆう》な人から見たら、春休みも夏休みも同じ事なんだろうけれども、内側で働いてい
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