って重《おも》にどんな話をしたか、差支《さしつか》えない限りそれを聞こうと試みた。
「なに別に家庭の事なんか一口も云やしませんよ」
これも嘘《うそ》ではなかった。記憶の好いHさんは、その時の話題を明瞭《めいりょう》に覚えていて、それを最も淡泊《たんぱく》な態度で話してくれた。
兄はその時しきりに死というものについて云々したそうである。彼は英吉利《イギリス》や亜米利加《アメリカ》で流行《はや》る死後の研究という題目に興味をもって、だいぶその方面を調べたそうである。けれども、どれもこれも彼には不満足だと云ったそうである。彼はメーテルリンクの論文も読んで見たが、やはり普通のスピリチュアリズムと同じようにつまらんものだと嘆息したそうである。
兄に関するHさんの話は、すべて学問とか研究とかいう側《がわ》ばかりに限られていた。Hさんは兄の本領としてそれを当然のごとくに思っているらしかった。けれども聞いている自分は、どうしてもこの兄と家庭の兄とを二つに切り離して考える訳には行かなかった。むしろ家庭の兄がこういう研究的な兄を生み出したのだとしか理解できなかった。
「そりゃ動揺はしていますね。御宅
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