、青春の第一日ともいうべき暖かい光を、南へ廻った太陽が自分達の上へ投げかけていた。獺《かわうそ》の襟《えり》をつけた重いとんびを纏《まと》った父も、少し厚手の外套《がいとう》を着た自分も、先刻《さっき》からの運動で、少し温気《うんき》に蒸《む》される気味であった。その春の半日を自分は父の御蔭《おかげ》で、珍らしく方々引っ張り廻された。この老いた父と、こう肩を並べて歩いた例《ためし》は近頃とんとなかった。この老いた父とこれから先もう何度こうして歩けるものかそれも分らなかった。
自分は鈍い不安のうちに、微《かす》かな嬉《うれ》しさと、その嬉しさに伴う一種のはかなさとを感じた。そうして不意に自分の胸を襲ったこの感傷的な気分に、なるべく己《おの》れを任せるような心持で足を運ばせた。
「御母さんは驚いているよ。御彼岸《おひがん》に御萩《おはぎ》を持たせてやっても、返事も寄こさなければ、重箱を返しもしないって。ちょっとでも好いから来ればいいのさ。来られない訳が急にできた訳でもあるまいし」
自分は何とも返事をしなかった。
「今日は久しぶりに御前を伴《つ》れて行って皆《みん》なに会わせようと思って
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