層不安になった。
下宿に帰ったら、大阪の岡田から来た一枚の絵端書《えはがき》が机の上に載せてあった。それは彼ら夫婦が佐野とお貞さんを誘って、楽しい半日を郊外に暮らした記念であった。自分は机に向って長い間その絵端書を見つめていた。
七
日曜には思い切って寝坊をする癖のついていた自分も、次の朝だけは割合に早く起きた。飯を済まして新聞を読むと、その新聞が汽車を待ち合せる間に買って、せわしなく眼を通す時のように、何の見るところもないほど、つまらなく感ぜられた。自分はすぐ新聞を棄《す》てた。しかし五六分|経《た》たないうちにまたそれを取り上げた。自分は煙草を吸ったり、眼鏡《めがね》の曇《くもり》を丁寧《ていねい》に拭《ぬぐ》ったり、いろいろな所作《しょさ》をして、父の来るのを待ち受けた。
父は容易に来なかった。自分は父の早起をよく承知していた。彼の性急《せっかち》にも子供のうちから善《よ》く馴《な》らされていた。落ちつかない自分は、電話でもかけて、どうしたのかこっちから父の都合を聞いて見ようかと思った。
母に狎《な》れ抜いた自分は、常から父を憚《はばか》っていた。けれ
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