宗教心を、自分一人で持って生れた女らしかった。その代り他《ひと》の運命も畏れないという性質《たち》にも見えた。
「男は厭《いや》になりさえすれば二郎さん見たいにどこへでも飛んで行けるけれども、女はそうは行きませんから。妾なんかちょうど親の手で植付けられた鉢植《はちうえ》のようなもので一遍植えられたが最後、誰か来て動かしてくれない以上、とても動けやしません。じっとしているだけです。立枯《たちがれ》になるまでじっとしているよりほかに仕方がないんですもの」
自分は気の毒そうに見えるこの訴えの裏面に、測《はか》るべからざる女性《にょしょう》の強さを電気のように感じた。そうしてこの強さが兄に対してどう働くかに思い及んだ時、思わずひやりとした。
「兄さんはただ機嫌《きげん》が悪いだけなんでしょうね。ほかにどこも変ったところはありませんか」
「そうね。そりゃ何とも云えないわ。人間だからいつどんな病気に罹《かか》らないとも限らないから」
彼女はやがて帯の間から小さい女持の時計を出してそれを眺《なが》めた。室《へや》が静かなのでその蓋《ふた》を締める音が意外に強く耳に鳴った。あたかも穏かな皮膚の面《
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