はこの間から少し勉強しようと思って、そろそろその準備に取りかかったもんですから、つい近頃はどこへも出る気にならないんです。僕はいつまでこんな事をしてぐずぐずしていたってつまらないから、今のうち少し本でも読んでおいて、もう少ししたら外国へでも行って見たいと思ってるんだから」
 この答えの後半は本当に自分の希望であった。自分は何でもいいからただ遠くへ行きたい行きたいと願っていた。
「外国って、洋行?」と嫂が聞いた。
「まあそうです」
「結構ね。御父さんに願って早くやって御頂きなさい。妾《あたし》話して上げましょうか」
 自分も無駄と知りながらそんな事を幻《まぼろし》のように考えていたのだが、彼女の言葉を聞いた時急に、「お父さんは駄目ですよ」と首を振って見せた。彼女はしばらく黙っていた。やがて物憂《ものう》そうな調子で「男は気楽なものね」と云った。
「ちっとも気楽じゃありません」
「だって厭《いや》になればどこへでも勝手に飛んで歩けるじゃありませんか」

        四

 自分はいつか手を出して火鉢《ひばち》へあたっていた。その火鉢は幾分か背を高くかつ分厚《ぶあつ》に拵《こしら》えたも
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