々|室《へや》の障子《しょうじ》を明け放って往来を眺めた。また廂《ひさし》の先に横《よこた》わる蒼空《あおぞら》を下から透《すか》すように望んだ。そうしてどこか遠くへ行きたいと願った。学校にいた時分ならもう春休みを利用して旅へ出る支度《したく》をするはずなのだけれども、事務所へ通うようになった今の自分には、そんな自由はとても望めなかった。偶《たま》の日曜ですら寝起《ねおき》の悪い顔を一日下宿に持ち扱って、散歩にさえ出ない事があった。
自分は半ば春を迎えながら半ば春を呪《のろ》う気になっていた。下宿へ帰って夕飯《ゆうめし》を済ますと、火鉢《ひばち》の前へ坐《すわ》って煙草《たばこ》を吹かしながら茫然《ぼんやり》自分の未来を想像したりした。その未来を織る糸のうちには、自分に媚《こ》びる花やかな色が、新しく活けた佐倉炭《さくらずみ》の焔《ほのお》と共にちらちらと燃え上るのが常であったけれども、時には一面に変色してどこまで行っても灰のように光沢《つや》を失っていた。自分はこういう想像の夢から突然何かの拍子《ひょうし》で現在の我に立ち返る事があった。そうしてこの現在の自分と未来の自分とを運命が
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