ったので、「じゃはなはだ御迷惑だけど、一郎さんとお直《なお》さんに引き受けていただきましょうか、この場|限《かぎ》り」と岡田が父に相談した。父は簡単に「好かろうよ」と答えた。嫂《あによめ》は例のごとく「どうでも」と云った。兄も「どうでも」と云ったが、後《あと》から、「しかし僕らのような夫婦が媒妁人《ばいしゃくにん》になっちゃ、少し御両人のために悪いだろう」と付け足した。
「悪いなんて――僕がするより名誉でさあね。ねえ二郎さん」と岡田が例のごとく軽い調子で云った。兄は何やらその理由を述べたいらしい気色《けしき》を見せたが、すぐ考え直したと見えて、「じゃ生れて初めての大役を引き受けて見るかな。しかし何にも知らないんだから」と云うと、「何向うで何もかも教えてくれるから世話はない。お前達は何もしないで済むようにちゃんと拵《こしら》えてあるんだ」と父が説明した。

        三十六

 反橋《そりはし》を渡る所で、先の人が何かに支《つか》えて一同ちょっととまった機会を利用して、自分はそっと岡田のフロックの尻を引張った。
「岡田さんは実に呑気《のんき》だね」と云った。
「なぜです」
 彼は自
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