オロとフランチェスカさ。どうだそうは思わんかね」
二十八
自分は年輩から云っても性格から云っても、平生なら兄の説に手を挙《あ》げて賛成するはずであった。けれどもこの場合、彼がなぜわざわざパオロとフランチェスカを問題にするのか、またなぜ彼ら二人が永久に残る理由《いわれ》を、物々しく解説するのか、その主意が分らなかったので、自然の興味は全く不快と不安の念に打ち消されてしまった。自分は奥歯に物の挟《はさ》まったような兄の説明を聞いて、必竟《ひっきょう》それがどうしたのだという気を起した。
「二郎、だから道徳に加勢するものは一時の勝利者には違ないが、永久の敗北者だ。自然に従うものは、一時の敗北者だけれども永久の勝利者だ……」
自分は何とも云わなかった。
「ところがおれは一時の勝利者にさえなれない。永久には無論敗北者だ」
自分はそれでも返事をしなかった。
「相撲《すもう》の手を習っても、実際力のないものは駄目だろう。そんな形式に拘泥《こうでい》しないでも、実力さえたしかに持っていればその方がきっと勝つ。勝つのは当り前さ。四十八手は人間の小刀細工だ。膂力《りょりょく》は自
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