云った。
 彼は黒いモーニングを着て、あまり好い香《におい》のしない葉巻を燻《くゆ》らしていた。
「出るなら出るさ。お前ももう一人前《いちにんまえ》の人間だから」と云ってしばらく煙ばかり吐いていた。それから「しかしおれがお前を出したように皆《みん》なから思われては迷惑だよ」と続けた。「そんな事はありません。ただ自分の都合で出るんですから」と自分は答えた。
 自分の寝惚《ねぼ》けた頭はこの時しだいに冴《さ》えて来た。できるだけ早く兄の前から退《しりぞ》きたくなった結果、ふり返って室の入口を見た。
「直《なお》も芳江も今湯に這入っているようだから、誰も上がって来やしない。そんなにそわそわしないでゆっくり話すが好い、電灯でも点《つ》けて」
 自分は立ち上がって、室《へや》の内を明るくした。それから、兄の吹かしている葉巻を一本取って火を点《つ》けた。
「一本八銭だ。ずいぶん悪い煙草だろう」と彼が云った。

        二十七

「いつ出るつもりかね」と兄がまた聞いた。
「今度の土曜あたりにしようかと思ってます」と自分は答えた。
「一人出るのかい」と兄がまた聞いた。
 この奇異な質問を受けた
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