自分の未来を打ち明けた明《あく》る朝、便所から風呂場へ通う縁側《えんがわ》で、自分はこの嫂にぱたりと出会った。
「二郎さん、あなた下宿なさるんですってね。宅《うち》が厭《いや》なの」と彼女は突然聞いた。彼女は自分の云った通りを、いつの間にか母から伝えられたらしい言葉遣《ことばづかい》をした。自分は何気なく「ええしばらく出る事にしました」と答えた。
「その方が面倒でなくって好いでしょう」
彼女は自分が何か云うかと思って、じっと自分の顔を見ていた。しかし自分は何とも云わなかった。
「そうして早く奥さんをお貰いなさい」と彼女の方からまた云った。自分はそれでも黙っていた。
「早い方が好いわよあなた。妾《あたし》探して上げましょうか」とまた聞いた。
「どうぞ願います」と自分は始めて口を開いた。
嫂は自分を見下《みさ》げたようなまた自分を調戯《からか》うような薄笑いを薄い唇《くちびる》の両端に見せつつ、わざと足音を高くして、茶の間の方へ去った。
自分は黙って、風呂場と便所の境にある三和土《たたき》の隅《すみ》に寄せ掛けられた大きな銅の金盥《かなだらい》を見つめた。この金盥は直径二尺以上もあっ
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