っさい云われない事になっている。約束だからね。それは好いが、そいつが私《わたし》にその盲目の女のいる所を訪問してくれと頼むんだね。何という主意か解らないが、つまりは無沙汰見舞《ぶさたみまい》のようなものさ。当人に云わせると、学問しただけに、鹿爪《しかつめ》らしい理窟《りくつ》を何《なん》が条《じょう》も並べるけれども。つまり過去と現在の中間を結びつけて安心したいのさ。それにどうして盲目になったか、それが大変当人の神経を悩ましていたと見えてね。と云っていまさらその女と新しい関係をつける気はなし、かつは女房子《にょうぼこ》の手前もあるから、自分はわざわざ出かけたくないのさ。のみならず彼がまた昔その女と別れる時余計な事を饒舌《しゃべ》っているんです。僕は少し学問するつもりだから三十五六にならなければ妻帯しない。でやむをえずこの間の約束は取消にして貰うんだってね。ところが奴《やつ》学校を出るとすぐ結婚しているんだから良心の方から云っちゃあまり心持はよくないのだろう。それでとうとう私《わたし》が行く事になった」
「まあ馬鹿らしい」と嫂《あによめ》が云った。
「馬鹿らしかったけれどもとうとう行った
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