度がお重には見せびらかしの面当《つらあて》のように聞えた。早く嫁に行く先をきめて、こんなものでも縫う覚悟でもしろという謎《なぞ》にも取れた。いつまで小姑《こじゅうと》の地位を利用して人を苛虐《いじ》めるんだという諷刺《ふうし》とも解釈された。最後に佐野さんのような人の所へ嫁に行けと云われたのがもっとも神経に障《さわ》った。
彼女は泣きながら父の室《へや》に訴えに行った。父は面倒だと思ったのだろう、嫂《あによめ》には一言《いちごん》も聞糺《ききただ》さずに、翌日お重を連れて三越へ出かけた。
十一
それから二三日して、父の所へ二人ほど客が来た。父は生来《せいらい》交際好《こうさいずき》の上に、職業上の必要から、だいぶ手広く諸方へ出入していた。公《おおやけ》の務《つとめ》を退いた今日《こんにち》でもその惰性だか影響だかで、知合間《しりあいかん》の往来《おうらい》は絶える間もなかった。もっとも始終《しじゅう》顔を出す人に、それほど有名な人も勢力家も見えなかった。その時の客は貴族院の議員が一人と、ある会社の監査役が一人とであった。
父はこの二人と謡《うたい》の方の仲善《
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