っしょにあっちへ御出《おい》で。妾達《わたしたち》は向《むこう》へ行って待っているから」と云った。嫂はいつもの通り淋《さむ》しい笑い方をして、「ええ直《じき》御後《おあと》から参ります」と答えた。
 自分達は室内の掃除に取りかかろうとする給仕《ボイ》を後《あと》にして食堂へ這入《はい》った。食堂はまだだいぶ込んでいた。出たり這入ったりするものが絶えず狭い通り路をざわつかせた。自分が母に紅茶と果物を勧めている時分に、兄と嫂の姿がようやく入口に現れた。不幸にして彼らの席は自分達の傍《そば》に見出せるほど、食卓は空《す》いていなかった。彼らは入口の所に差し向いで座を占めた。そうして普通の夫婦のように笑いながら話したり、窓の外を眺めたりした。自分を相手に茶を啜《すす》っていた母は、時々その様子を満足らしく見た。
 自分達はかくして東京へ帰ったのである。

        三

 繰返していうが、我々はこうして東京へ帰ったのである。
 東京の宅は平生の通り別にこれと云って変った様子もなかった。お貞《さだ》さんは襷《たすき》を掛けて別条なく働いていた。彼女が手拭《てぬぐい》を被《かぶ》って洗濯をし
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