ている後姿を見て、一段落置いた昔のお貞さんを思いだしたのは、帰って二日目の朝であった。
芳江《よしえ》というのは兄夫婦の間にできた一人っ子であった。留守《るす》のうちはお重《しげ》が引受けて万事世話をしていた。芳江は元来母や嫂《あによめ》に馴《な》ついていたが、いざとなると、お重だけでも不自由を感じないほど世話の焼けない子であった。自分はそれを嫂の気性《きしょう》を受けて生れたためか、そうでなければお重の愛嬌《あいきょう》のあるためだと解釈していた。
「お重お前のようなものがよくあの芳江を預かる事ができるね。さすがにやっぱり女だなあ」と父が云ったら、お重は膨《ふく》れた顔をして、「御父さんもずいぶんな方《かた》ね」と母にわざわざ訴えに来た話を、汽車の中で聞いた。
自分は帰ってから一両日して、彼女に、「お重お前を御父さんがやっぱり女だなとおっしゃったって怒ってるそうだね」と聞いた。彼女は「怒ったわ」と答えたなり、父の書斎の花瓶《はないけ》の水を易《か》えながら、乾いた布巾《ふきん》で水を切っていた。
「まだ怒ってるのかい」
「まだってもう忘れちまったわ。――綺麗《きれい》ねこの花は何
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