。自分は平気を粧《よそお》いながら母と話している間にも、両人の会見とその会見の結果について多少気がかりなところがあった。母は二人の並んで来る様子を見て、やっと安心した風を見せた。自分にもどこかにそんなところがあった。
自分は行李を絡《から》げる努力で、顔やら背中やらから汗がたくさん出た。腕捲《うでまく》りをした上、浴衣《ゆかた》の袖《そで》で汗を容赦なく拭いた。
「おい暑そうだ。少し扇《あお》いでやるが好い」
兄はこう云って嫂を顧みた。嫂は静に立って自分を扇いでくれた。
「何よござんす。もう直《じき》ですから」
自分がこう断っているうちに、やがて明日《あす》の荷造りは出来上った。
帰ってから
一
自分は兄夫婦の仲がどうなる事かと思って和歌山から帰って来た。自分の予想ははたして外《はず》れなかった。自分は自然の暴風雨《あらし》に次《つい》で、兄の頭に一種の旋風が起る徴候を十分認めて彼の前を引き下った。けれどもその徴候は嫂《あによめ》が行って十分か十五分話しているうちに、ほとんど警戒を要しないほど穏かになった。
自分は心のうちでこの変化に驚いた
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