から佐野の御凸額を気にしていたごとく、ほかのものも同じ人の同じ特色を注意していたらしかった。
「写真で見たより御凸額ね」と嫂《あによめ》は真面目《まじめ》な顔で云った。
自分は冗談のうちに自分を紛《まぎら》しつつ、どんな折を利用して嫂の事を兄に復命したものだろうかと考えていた。それで時々|偸《ぬす》むようにまた先方の気のつかないように兄の様子を見た。ところが兄は自分の予期に反して、全くそれには無頓着《むとんじゃく》のように思われた。
四十二
自分が兄から別室に呼出されたのはそれが済んでしばらくしてであった。その時兄は常に変らない様子をして、(嫂に評させると常に変らない様子を装《よそお》って、)「二郎ちょっと話がある。あっちの室《へや》へ来てくれ」と穏かに云った。自分はおとなしく「はい」と答えて立った。しかしどうした機《はずみ》か立つときに嫂《あによめ》の顔をちょっと見た。その時は何の気もつかなかったが、この平凡な所作がその後自分の胸には絶えず驕慢《きょうまん》の発現として響いた。嫂は自分と顔を合せた時、いつもの通り片靨《かたえくぼ》を見せて笑った。自分と嫂の眼を
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