は軒に響くというよりもむしろ風に乗せられて、気ままな場所へ叩《たた》きつけられて行くような音を起した。その間に三味線の音が気紛《きまぐ》れものらしく時々二人の耳を掠《かす》め去った。
「用があるなら早くおっしゃいな」と彼女は催促した。
「催促されたってちょっと云える事じゃありません」
自分は実際彼女から促された時、何と切り出して好いか分らなかった。すると彼女はにやにやと笑った。
「あなた取っていくつなの」
「そんなに冷かしちゃいけません。本当に真面目《まじめ》な事なんだから」
「だから早くおっしゃいな」
自分はいよいよ改まって忠告がましい事を云うのが厭《いや》になった。そうして彼女の前へ出た今の自分が何だか彼女から一段低く見縊《みくび》られているような気がしてならなかった。それだのにそこに一種の親しみを感じずにはまたいられなかった。
三十一
「姉さんはいくつでしたっけね」と自分はついに即《つ》かぬ事を聞き出した。
「これでもまだ若いのよ。あなたよりよっぽど下のつもりですわ」
自分は始めから彼女の年と自分の年を比較する気はなかった。
「兄さんとこへ来てからもう何
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