《すきま》なく身構えているらしく見えた。自分はまた軒端《のきば》へ首を出して上の方を望んだ。室《へや》の位置が中庭を隔てて向うに大きな二階建の広間を控えているため、空はいつものように広くは限界に落ちなかった。したがって雲の往来《ゆきき》や雨の降り按排《あんばい》も、一般的にはよく分らなかった。けれども凄《すさ》まじさが先刻《さっき》よりは一層はなはだしく庭木を痛振《いたぶ》っているのは事実であった。自分は雨よりも空よりも、まずこの風に辟易《へきえき》した。
「あなたも妙な方ね。帰るというからそのつもりで仕度をすれば、また坐《すわ》ってしまって」
「仕度ってほどの仕度もしないじゃありませんか。ただ立ったぎりでさあ」
自分がこう云った時、嫂はにっこりと笑った。そうして故意《わざ》と己《おの》れの袖《そで》や裾《すそ》のあたりをなるほどといったようなまた意外だと驚いたような眼つきで見廻した。それから微笑を含んでその様子を見ていた自分の前に再びぺたりと坐った。
「何よ用談があるって。妾《あたし》にそんなむずかしい事が分りゃしないわ。それよりか向うの御座敷の三味線でも聞いてた方が増しよ」
雨
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