現の下へ来た時、細い急な石段を仰ぎ見た自分は、その高いのに辟易《へきえき》するだけで、容易に登る勇気は出し得なかった。兄はその下に並べてある藁草履《わらぞうり》を突掛けて十段ばかり一人で上《のぼ》って行ったが、後《あと》から続かない自分に気がついて、「おい来ないか」と嶮《けわ》しく呼んだ。自分も仕方なしに婆さんから草履を一足借りて、骨を折って石段を上り始めた。それでも中途ぐらいから一歩ごとに膝《ひざ》の上に両手を置いて、身体《からだ》の重みを託さなければならなかった。兄を下から見上げるとさも焦熱《じれ》ったそうに頂上の山門の角に立っていた。
「まるで酔っ払いのようじゃないか、段々を筋違《すじかい》に練って歩くざまは」
 自分は何と評されても構わない気で、早速帽子を地《じ》の上に投げると同時に、肌を抜いだ。扇を持たないので、手にした手帛《ハンケチ》でしきりに胸の辺りを払った。自分は後《うしろ》から「おい二郎」ときっと何か云われるだろうと思って、内心穏かでなかったせいか、汗に濡《ぬ》れた手帛をむやみに振り動かした。そうして「暑い暑い」と続けさまに云った。
 兄はやがて自分の傍《そば》へ来て
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