くかな」と云い出した。
「権現様も名所の一つだから好いでしょう」
 二人はすぐ山を下りた。俥《くるま》にも乗らず、傘《かさ》も差さず、麦藁帽子《むぎわらぼうし》だけ被《かぶ》って暑い砂道を歩いた。こうして兄といっしょに昇降器へ乗ったり、権現へ行ったりするのが、その日は自分に取って、何だか不安に感ぜられた。平生でも兄と差向いになると多少|気不精《きぶっせい》には違なかったけれども、その日ほど落ちつかない事もまた珍らしかった。自分は兄から「おい二郎二人で行こう、二人ぎりで」と云われた時からすでに変な心持がした。
 二人は額から油汗をじりじり湧《わ》かした。その上に自分は実際|昨夕《ゆうべ》食った鯛《たい》の焙烙蒸《ほうろくむし》に少しあてられていた。そこへだんだん高くなる太陽が容赦なく具合の悪い頭を照らしたので、自分は仕方なしに黙って歩いていた。兄も無言のまま体を運ばした。宿で借りた粗末な下駄《げた》がさくさく砂に喰い込む音が耳についた。
「二郎どうかしたか」
 兄の声は全く藪《やぶ》から棒が急に出たように自分を驚かした。
「少し心持が変です」
 二人はまた無言で歩き出した。
 ようやく権
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