また気にしないような眼遣《めづかい》で、時々見た。その見方がまた余りに神経的なので、母の心はこの二人について何事かを考えながら歩いているとしか思えなかった。けれども自分は話しの面倒になるのを恐れたから、素知《そし》らぬ顔をしてわざと緩々《ゆるゆる》歩いた。そうしてなるべく呑《の》ん気《き》そうに見せるつもりで母を笑わせるような剽軽《ひょうきん》な事ばかり饒舌《しゃべ》った。母はいつもの通り「二郎、御前見たいに暮して行けたら、世間に苦はあるまいね」と云ったりした。
しまいに彼女はとうとう堪《こら》え切れなくなったと見えて、「二郎あれを御覧」と云い出した。
「何ですか」と自分は聞き返した。
「あれだから本当に困るよ」と母が云った。その時母の眼は先へ行く二人の後姿をじっと見つめていた。自分は少くとも彼女の困ると云った意味を表向《おもてむき》承認しない訳に行かなかった。
「また何か兄さんの気に障《さわ》る事でもできたんですか」
「そりゃあの人の事だから何とも云えないがね。けれども夫婦となった以上は、お前、いくら旦那《だんな》が素《そ》っ気《け》なくしていたって、こっちは女だもの。直《なお》の
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